境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)の原因-親、脳、ホルモン-

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      2017/03/03

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前回に引き続き、境界性パーソナリティ障害のお話です。

今回は境界性パーソナリティ障害の原因を脳、ホルモン、養育という3つの観点から紹介していきます。


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境界性パーソナリティ障害は原因不明

今から境界性パーソナリティ障害のさまざまな原因を紹介しますが、どれも『絶対』ではありません。

境界性パーソナリティ障害の確たる原因は不明です。

ですがいろいろな研究から明らかになったこと、関係が深いと考えられることを紹介していきます。

また、脳-ホルモン-養育はそれぞれ関係しあっています。

その点を押さえたうえで参考にしていただけると嬉しいです。

 

脳から見る原因

前頭前野の特定の領域の応答性の低下

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前頭前野は脳の最高中枢とも言われ、記憶や思考、欲求の制御などさまざまな働きを持っています。

その前頭前野の特定の部分では、情動反応(感情的な反応)を制御しています。

境界性パーソナリティ障害の方の場合は、情動反応を抑える部分が働きにくいという知見があります。[1]

境界性パーソナリティ障害の特徴である『感情の上下が激しい』『怒りが爆発する』などは、脳の機能低下から来た可能性が高いのです。

 

脳の一部の容積が小さい

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少し古い2000年の研究ではありますが、境界性パーソナリティ障害の方はそうでない方に比べて脳の海馬の容積が16%、扁桃体の容積が8%小さいことがわかりました。[2]

海馬と言えば記憶する場所というイメージがありますが、それ以外にも役割があります。

例えば恐怖や攻撃、性行動なども海馬が関わる部分の1つです。

ちなみにこの海馬はかなり繊細な部分でもあり、ストレスを受けると容積が減ってしまいます。

災害・事件・事故・内乱や紛争体験の後にPTSDになる方は多くいますが、PTSDの方も海馬の減少が見られます

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扁桃体の方は、もっとダイレクトに感情とつながっている部分です。

五感を通して入ってきた情報を『快・不快』『好き・嫌い』で判断する部分でもあります。

ですので、こういうことがよい・悪い・好き・嫌いといった価値判断も扁桃体が作るものと言えます。

また、海馬と扁桃体は協力し合っています。

海馬と扁桃体は隣り合って神経細胞でつながれており、感情が記憶の形成に影響を与えることがあります。

逆に感情が出るときに過去の記憶が呼び出されることもあるのです。

この人何となく嫌い…と思ったら昔似たような人に意地悪をされていた記憶が原因みたいな感じです。

 

ホルモン

血液中のオキシトシンの低下

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愛情ホルモンとして最近注目を浴びているオキシトシン。

痛みを和らげる、信頼感を作る、愛情を深める、安心感と関わりのあるホルモンです。

境界性パーソナリティ障害の方はそうでない人よりも、孤独な状況下でオキシトシンレベルがより低下することが明らかになりました。[3]

この研究では境界性パーソナリティ障害の女性22人と、健康対照群21人にバーチャルボール投げゲームに参加してもらいました。

バーチャルの世界で3人以上でボール投げをするのですが、自分にだけボールが回ってこなくなります。

これを『社会的孤立』として、オキシトシンの量を測るというものです。

ちなみにこのボールゲームは孤立状態を意図的に作る方法として、ほかの研究でもよく使われています。

 

研究の結果、境界性パーソナリティ障害の方は対照群に比べて『孤立した状況』でのオキシトシンレベルが低下しやすかったのです。

それに加えて、幼児期に身体的・精神的虐待を受けた方は、オキシトシンレベルが復活するまでにも時間がかかりました

 

女性ホルモンとの関係

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境界性パーソナリティ障害は圧倒的に女性に多いのですが、そこには女性特有のホルモンリズムとの関係があると言われています。

2015年に発表された研究によれば、女性ホルモンの変化が、リスクのある女性では境界性パーソナリティ障害の特徴の出方に影響を与える可能性があるとわかりました。[4]

研究では、感情や行動の衝動性との関わりを指摘しています。

境界性パーソナリティ障害ではない人でもホルモン変化でイライラしたり急に買い物がしたくなったりということはありますし、感情がホルモンの影響を受けているっていうのは納得ですよね。

 

養育・親との関係

境界性パーソナリティ障害だけではなく、パーソナリティ障害全般の原因として親との関係が指摘されることは多いです。

精神科医の岡田尊司さんは、境界性パーソナリティ障害については『親へのこだわり』という言葉で表現しています。

具体的にどんなことが境界性パーソナリティ障害の原因となり得るのかを見ていきます。

 

心理的(精神的)虐待

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心理的(精神的)虐待は肉体的虐待と違って外から見える傷がないのでわかりにくいですが、心は常に骨折・傷・あざだらけの状態です。

日本では『子ども虐待防止オレンジリボン運動』のページで、心理的(精神的)虐待が以下のように定義されています。

心理的虐待は、大声や脅しなどで恐怖に陥れる、無視や拒否的な態度をとる、著しくきょうだい間差別をする、自尊心を傷つける言葉を繰り返し使って傷つける、子どもがドメスティック・バイオレンスを目撃する、などを指します。子どもの心を死なせてしまうような虐待、と理解すると良いと思います。

 (子ども虐待とは|オレンジリボン運動)

 

また、カナダの保健省が1996年に定義したところによれば『力と制御に基づく』『感情的応答を否定するもの』ということです。

もっと簡単に言うと『喜怒哀楽の否定』に近いです。

人間は生きている限り喜怒哀楽がまったくないということはありませんし、子供は素直に喜怒哀楽を出してきます。

それに対して親が見ないふりをする、押さえつける、自分の求める喜怒哀楽でないと否定するといった行為をすると、子どもの感情の行き場はなくなってしまいます。

 

児童精神科医の佐々木正美さんは、感情について以下のように述べています。

幼児期に感情をコントロールできる力を育てることは、人格を作り上げていく上でとても大切です。

その力は、まず感情をしっかり出せることから育っていきます。うれしい感情も苦しい感情も思いっ切り表現できること。そして表現した感情をしっかり温かく受け止めてもらえること。

(受け止めて! 喜怒哀楽|あんふぁんWeb)

 

ネグレクト(育児放棄)

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私が住んでいる北海道の平成27年度児童相談所における相談対応状況を見てみると、虐待の内容で2番目に多いのがネグレクトです。[5]

身体的虐待と順位が入れ替わる年もありますし、北海道は全国的に見てもネグレクトが多めと言われます。

それを踏まえてもネグレクトというものがあり、身体的虐待や精神的虐待と同じくらい深刻な問題という点は同じです。

 

ネグレクトとは子どもに必要な環境を与えないことを指します。

例えばおむつを変えずに放置する、食べ物を与えない、病気になっても放っておくなどです。

ネグレクトを受ける子どもは、肉体の発育が遅れたり不潔にしたことでかかる病気になりやすいだけではなく、心理的にも大きなハンディを負います。

それがやがてはパーソナリティ障害、うつ病、不安障害、対人関係の問題につながる可能性があるのです。

 

優しい虐待

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虐待といえば怒鳴られる、殴られる、無視されるなどネガティブな感情をイメージしがちです。

ですが、境界性パーソナリティ障害を語る上では『優しい虐待』の存在も見逃せません。

優しい虐待とは『親が都合よく子供を支配する』ことです。

子どもの人生を勝手に決めて、それに従うように上手に誘導するタイプです。

 

特に境界性パーソナリティ障害との関連性で言えば、『母親が娘に優しい虐待をする』というケースが挙げられます。

信田さよ子さんの著書で語られる『母が重い』というのは、優しい虐待が多いのかなと私は感じています。

一見すると親子の仲は良く、虐待されている子どもが自立を阻む親に気づくのはかなり後になったりもします。

 

まとめ

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・境界性パーソナリティ障害の原因ははっきりしていない

・脳から見ると感情の反応や恐怖に関わる部分の機能低下・容量減少がある

・ホルモンから見るとオキシトシン(愛情ホルモン)の低下しやすさ、女性ホルモンとの関係性

・養育から見ると心理的虐待、ネグレクト、優しい虐待との関係性が指摘される

 

個人的には心理的虐待や優しい虐待によって脳・ホルモンに影響を及ぼすのかなーと思いました。

脳の形成期に虐待を受けることがより高いリスクになるのではないかと!

 

参考文献・サイト

[1]New AS他(2008) Recent advances in the biological study of personality disorders. 

[2]Driessen M他(2000) Magnetic resonance imaging volumes of the hippocampus and the amygdala in women with borderline personality disorder and early traumatization.

[3] Jobst A他(2014)
Social Exclusion Leads to Divergent Changes of Oxytocin Levels in Borderline Patients and Healthy Subjects

[4]Tory A. Eisenlohr-Moul(2015)Ovarian Hormones and Borderline Personality Disorder Features: Preliminary Evidence for Interactive Effects of Estradiol and Progesterone

[5]平成27年度 道の児童相談所における児童虐待相談対応状況

小羽俊士(2009)『境界性パーソナリティ障害 疾患の全体像と精神療法の基礎知識』 みすず書房

子ども虐待防止オレンジリボン運動

Becky Oberg Recognizing Emotional Abuse: Facing BPD

岡田尊司(2004)『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』PHP新書

岡田尊司(2004) 『人格障害の時代』 平凡社新書

磯部潮(2003)『人格障害かもしれない どうして普通にできないんだろう』 光文社新書

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