【書評】『毒親の子どもたちへ』を読んでみた

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      2017/07/17

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子どもの毒になる親、いわゆる『毒親』に関連した本は多くが著者自身が毒親サバイバーだったり、毒親についての研究を長年行ってきているかどちらかです。

今回『毒親の擁護本』として話題になっていた『毒親の子どもたちへ』の著者である斎藤学氏もその1人。

精神科医であり、「NPO法人日本トラウマサバイバー」「日本子どもの虐待防止研究会」などの理事長も務めている方です。

アダルトチルドレンの概念を広めたと言っても過言ではない彼がなぜ毒親擁護と言われるような本を出したのか、実際のところはどうなのかと思って読んでみました!

 

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毒親を言い訳にするな!前に進め!

「自分は悪くない」「自分は何もしたくない」、そんな言い訳や免責として「毒親」という言葉を使ってはいないでしょうか。(p.49)

こんな文章がとても印象に残る一冊です。

長年アダルトチルドレンに関する研究・臨床の世界に身を置いた筆者がここにきて『安易な毒親批難ブーム』に一石を投じるのが目的のようです。

名作の解釈から実際のケースまでいろいろと書いていますが、終始一貫して『毒親を言い訳にせず前に進め』というメッセージが読み取れます。

めっちゃ力強く背中を押すタイプの本なので、賛否両論巻き起こった理由はそこにあるんだと思います。

なお、具体的な毒親対策が書いてあるわけではないので、その点は注意してください。

 

『毒親の子どもたちへ』がおススメの人

私の書評は常に『病的で日常生活が阻害されかねないほど不安な人が読んだ時に役に立つか』を基準としていますが、今回に限っては『毒親持ちという自覚があり、あるいは毒親と言われた経験があり、』を前に付け加えたいと思います。

その点を念頭に置いてこの本をおススメしたい人は、こんな感じです。

 

・毒親を恨むのにそろそろ疲れている

・もう毒親から脱出した

・とりあえず毒親って流行ってるから言ってみた

・子どもに毒親と言われて傷ついた

 

子どもの立場で言えば、今『毒親』についてライトに考えられるならこの本はたちまち効果を発揮するはずです。

あるいは自分の中の『毒』と闘ってあとちょっとで勝てるところまで来ている、一度ヘビーな部分まで落ちてはいても今はライトな部分に来ているなら、これからの人生を生きるための力強いメッセージをもらえたと思えるんじゃないかな、と。

それから、親の立場。急に毒親と言われて傷ついてしまったり、自分を見直したくても子育てに失敗したという自責感が強い方にはおススメです。

毒親自体を擁護する本ではありませんが、家族の関係性や親子のあり方について考えるのに『親の立場からの毒親』を考慮して作られた本です。

 

『毒親の子どもたちへ』がおススメじゃない人

毒親,許せない,許さなくていい

一方でこの本をおススメ出来ない人もいます。

『毒親本』ということで手に取って傷つく人が多かったからではないかと私は感じました。

 

毒親を恨みたい、怒鳴りたい、仕返ししてやりたい

・毎日のように毒親からの被害に遭っている、あるいはフラッシュバックする

・毒親というかすでに犯罪者で、通報したら確実に捕まるレベル

 

こういった場合、『毒抜き』のために親を恨んだり嫌ったり激しく拒絶することが必要な時期か、あるいは毒親ごと断ち切った方がよいケースです。

このタイプがこの本を読んでしまうと、逆に毒になってしまうこともあると思います。

あれこれ言い訳するな、親のせいにするなと言っている本のように感じる危険性がある文章です。

 

毒親を着地点にしない

この本をおススメする人にもおススメしない人にも、1つだけこの本の中で考え方としてすごくすばらしいなと感じたところがあったので紹介します。

アダルト・チャイルドとしての自覚を持つことは、成長のひとつの“出発点”だったはずなのに、毒親に育てられてダメになった私という“着地点”のように主張するとなると、これは取り返しのつかない“宿命”ということになってしまいます。
このような宿命論からは、何も生まれません。(p.10)

毒親を考えるときに、自分を中心に据えるのか親を中心に据えるのかという問題です。

親を中心に据えてしまうと、それは宿命論となって『こんな親だから自分はダメだ』で終わってしまいます。

自分を中心に据えれば、『こんな親だから自分はダメになった』→『こんなところが自分で自分を苦しめる原因だ』→『変えていこう』となる可能性も秘めています。

むしろ、そういう成長へのきっかけとして生み出された概念がアダルトチルドレンであり毒親だと私も思うのです。

 

毒親を恨むのは『すばらしい』成長過程

毒親,理解されない,本,おすすめ

今までの人生がつらすぎて『毒親』を着地点にしたい時期もあると思います。

そういう人を成長過程にあると筆者は言いますが、私はそこに『すばらしい』を付け加えたいなと思います。

未熟な者が毒親持ちでない人の境地に達する・追いつくための過程ではありません。

『自分の考え方・あり方』に目覚めるためのメンテナンスとしての意味を含んだ成長過程です。

 

毒親持ちでないと感じている人に追いつこうなんて考えなくていいんです。

あなただけが辿る成長過程の1つとして毒親を恨んだり怒ったり、時には自分の中で生まれるひどい言葉に自分で嫌になったりしてもいいんです。

そして、それを『世間から見た未熟の証』と思う必要はありません。

今はとても苦しいかもしれませんが、すばらしい自分に出会うためのすばらしい成長過程なんです。

未熟・成長過程という言葉がたびたび出てくる本で、『いい大人が未熟』と言われるような自己否定感にとらわれる方もいるのではないかなという杞憂から付け足してみましたw

 

家族との再構築は必要か?

p.88から数ページにわたって『親との関係の再構築』について筆者は述べています。

つまるところ、いずれ大人同士として再構築する可能性があるのだから極端に親を断ち切らなくてもいいのではということが書いてあります。

これに関しては、私は今すぐ断ち切った方がいいケースも多いのではないかと感じました。

親としてというよりも社会に生きる人間としてどうしようもない人がうっかり親になってしまったケースは、けして少なくありません。

この辺も『ライトな毒親論ユーザー』に向けた著書なので、犯罪者あるいは犯罪者すれすれの毒親持ちの方には参考にしない方がよい部分かと思います。

 

評価

★★★☆☆

私のサイトにはヘビーな毒に悩んでいる方が多いのかな、と常々感じているので評価は、別におススメはしないけど一度は読んでみてもいいかも、くらいの3にしました。

インナー毒親の考え方や、自分の成長に焦点を合わせるという点はすごく共感できたのですが、一方で家族という集団に対する愛着が強い印象です。

家族はいいものだというベースがどこかにあり、そのベースがあるからこそ語れるのかなという文章も散見されました。

毒親持ちを自覚する方にとっては『家族=恐怖、不安、悲しみ』がベースになっているので、受け取りにくい部分が出てくるかと思います。

ベストは図書館とかでちらっと見て面白そうだったら借りる感じです…!

 

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