防衛機制の知性化の具体例と合理化・分離との関係とは?

防衛機制の知性化の具体例と合理化・分離との関係とは?
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今回は心を守る無意識の仕組みである防衛機制のうち、知性化について紹介します。

以前紹介した『分離』や『合理化』の話も出てきますよー^^


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防衛機制の知性化とは

知性化とは、心の危機によって生まれる情緒を知性でコントロールすることです。

防衛機制の『心を守らなきゃ』という判断の対象となるのは感情や衝動です。

この感情や衝動をコントロールするためにさまざまな防衛機制があるわけですが、知性化では『論理』『知』で感情や衝動の押さえつけを試みます。

 

知性化の具体例

自分が病気になったとき

病院の廊下

自分が病気になったと知ったとき、不安や恐怖が心のなかでうずまきますよね。

これからどうなってしまうのか、死ぬのではないか…という不安に圧倒されそうになると、心の危機から脱するために防衛機制が用いられます。

知性化では、病気の概要や罹患率・生存率を調べたり、薬物療法やその他の治療について詳しく知ることで安心を得ようとします。

不安や恐怖は心の奥に抑圧され、表面には知性化によって得た知識だけが出る状態です。

 

強迫性障害診断直後の私はまさに知性化を行っていました。

強迫性障害に加えて様々な精神疾患の概要を調べたりすることで、安心しようとしていたようです。

 

コミュニケーションを取りたい…

友達とパーティ

コミュニケーションを取りたいのにうまくいかず、なかなか周囲となじめないとき、欲求不満が生まれます。

周囲とうまくいかない自分を認めるのはつらい、でも実際にコミュニケーションを取るのは難しい…そんな状態を抜け出すために知性化を使うと、以下のような行動が起きます。

・コミュニケーション術の本を読み漁る

・コミュニケーションとは何か、歴史的な観点を調べる

・概念的になる

などです。

本を読んだからといって、『今日は1人以上に挨拶するぞ!』などの行動に出ることは稀です。

それよりもコミュニケーションに関する知識を得たり、現代のコミュニケーションの在り方を考えたりという行動が主です。

問題解決のための直接的な行動が起きにくいのは、知性化の特徴の一種です。

 

知性化のメリットとデメリット

勉強のための本

知性化のメリットとデメリットについて紹介します。

最大のメリットである、『心の危機を一時的にとは言え脱することができる』というのは防衛機制全体のメリットですので、ここでは割愛します。

 

メリット1.知識がつく

『知』性化というだけあって、知性化を使うと知識が手に入ります。

これは、数ある防衛機制の中でも珍しいタイプと私は考えています。

知っておくと便利なことも世の中にはたくさんありますし、知識があること自体はいいことですよね。

 

メリット2.自分をより幅広い主観で見られる

あなたの手を水につけます

知識を得るというのは、さまざまな考え方や見方を得るのとよく似ています。

知性化の過程では、ほかの人はこんな風に考えているのか、こういう研究結果があり、こういう見方ができるのか…という発見があるはず。

これにより、自分の主観の幅を広げ、様々な角度から現象を捉えられるようになるのは、知性化のメリットと言えるでしょう。

 

デメリット1.感情に一向に向き合えない

知性化では、感情や衝動を『知』によって切り離します。

知性化を乱用すると、『感情を味わう能力』が低下し、考えることはできても感じることが難しくなります。

味わわれなかった不快な感情は抑圧され、別の防衛機制に変化して出てきたり、モヤモヤした状態が続いたりします。

また、感情が伴わないことによって『自分事』としての実感がなくなるデメリットも生まれてきます。

 

デメリット2.行動力の不足

線路の上のスタートライン

2つ目のデメリットは、行動力の不足です。

知性化で得た知識は、行動しない言い訳として使うことが可能です。

短期的に見て、一番傷つかない方法は行動しないことです。

将来のことはわかりませんが、その瞬間だけは『行動しない=何も起きない』ですよね。

 

ただ『行動したくない!』というのは、単なるわがままに見えたり、自分でも良くないと思う可能性があります。

そこに理屈をつけられるのが知性化の特徴です。

『統計的に見ると廃業率が高いからやめておいた方がよい』

『結局このことが社会にどれくらいの有用性を与えるかわかっていないからやらなくていい』

このように言うと、なんとなく正当化できますよね。

 

もちろん、本当にそう考えていて、短期的・長期的に自分のためになるものだと判断して行動しないなら、それはありだと思います。

ただの言い訳になってしまう可能性がある、ということです。

 

デメリット3.問題の先送り

絶望する男性

デメリット1の『感情に向き合えない(そして自分ごとにできない)』と、デメリット2の『行動力がない』という2つが合わさると、問題が先送りされます。

 

例えば学校での対人関係に恐怖を感じて、知性化で防衛機制したとします。

知性化によって『教育の意義』『対人関係の不必要性』などについての知識を手に入れた結果、

・対人関係が怖いから学校に行きたくない

という状況を

・対人関係は不必要だし、教育は必ずしも学舎で行われるべきものでもないから学校に行きたくない

とすり替えてしまいます。

 

こうなると、『対人関係が怖い』というもともとの問題は解決されていません。

もちろん、何かの状況転換を経てもともとの問題が解決されたり、年とともに消えることはあります。

ですが、場合によっては先送りで問題が悪化することもあります。

学校での対人関係につまづき、それを知性化で誤魔化したまま社会人になれば、また似たような対人関係への恐怖が出てくるのです。

先送りに先送りを重ねた結果、ずっと苦しい人生を送らなければならないかもしれません。

 

知性化と合理化・分離・解離

知性化は、今まで紹介したいくつかの防衛機制ともかかわりがあるので、見ていきたいと思います。

 

知性化と合理化

防衛機制・合理化の具体例と対処法
合理化というのは、いわゆる『すっぱいブドウ』の心理です。

手に入れられなかったものに対して、理屈をつけて正当化する心の働き。

知性化とは『理屈をつけて正当化』という意味で、非常によく似ていますよね。

 

ただ、合理化はあくまでも個人の納得の範囲にとどまります。

すっぱいブドウでいえば、手に入れられなかったブドウがすっぱい理由は、自分が納得できればそれでいいのです。

この際、『なんとなくおいしそうに見えない』などの理由でもよいです。

 

一方で知性化では、より客観的な側面を重視し、理論や学説を用いるのが特徴的。

手に入れられなかったブドウがすっぱい理由も

・このブドウは粒がそろっておらず、ややしぼみがあるのですっぱいはずだ

・この地域のブドウは売上が悪いし、生産地として適切ではないからおいしくないと予測される

といったものになります。

※私はどういうブドウがすっぱいのかわからないので、上の理由はあくまで例です!

 

知性化と分離・隔離

防衛機制の分離・隔離を具体例を交えながら解説!
分離・隔離というのは、自分の感情と起きたことを切り離す防衛機制です。

例えばひどい目に遭ったのに事件や事故のことを淡々と話せるのは、分離・隔離が起きている可能性があります。

知性化では、知識によって感情を切り離すので、ある意味では分離・隔離といえます。

ただし、切り離しのための方法が『知識』に偏っている点では、分離・隔離の概念のうちの一部分が知性化と考えられます。

 

知性化と解離

上の分離・隔離の記事で少し出てきた『解離』という防衛機制。

これは感情と行動の分離ではなく、感情や出来事と自分を分離させることです。

この出来事を私が体験したわけではない、というのが解離の特徴。

病的な解離になると、記憶がなくなったりもします。

知性化の場合は、心のどこかで、キチンと『私が体験している』という意識はあります。

ですが、知性化によって感情を味わいにくくなり、自分事という概念が薄れるという意味では、解離に近いと私は考えています。

 

知性化を減らすには

どんな防衛機制も、そればかり使いすぎるのはよくないといわれています。

そこで、私自身の体験からも考えた知性化の減らし方を紹介していきます。

 

どう感じたかを言葉にしてみる

イチゴの朝ご飯

知性化の沼にはまってしまうと、概念的にどうとか学術的にどうとか、そういった言葉に陥りがちになります。

結果として個人の体験とそれに伴う感情が、どんどん無視されていくんですね。

ですので、まずは、どう感じたかを言葉にする練習から始めてみましょう。

心の危険を与えるものにが向き合いにくいと思いますので、身近なものでOKです。

食べ物を食べた時に、『私は〇〇(甘い・しょっぱいなど)と感じた』という文章を埋めるように考えてみてください。

おいしかった、うれしかった、楽しかった、悲しかったなど、すべて『私は~と感じた』という文章にしてみましょう。

 

実は、私自身これがとても難しい時期がありました。

知性化に走りすぎて、食べる前から『おいしいものだ』と頭で判断したり…。

誰が認めなくても自分がおいしいと思えばそれでいいのに、人の知識に頼ろうとしていた側面があったと思います。

いきなり感情を味わうのは難しいと思うので、最初は味覚・触覚・聴覚あたりから攻めていきましょう!

 

小さな行動を起こす

瞑想をしている人の手

これは合理化の低減法でも紹介しました。

合理化・知性化など現状維持が行き過ぎるタイプの防衛機制の解消法として役立つ方法です。

まずは知性化しがちな対象、知識ばかりを追っかけがちなことを探しましょう。

私の場合は精神疾患の治療法に関して知性化しやすかったです。

 

次に、その対象に対して、得た知識から1つでも行動を起こしましょう。

私であれば、精神疾患に瞑想がいいという知識を手に入れたら、実際に瞑想するのが『行動』の部分です。

普段だったら朝から知識を仕入れようとしてスマホを見るところを、瞑想に変えます。

実践はいきなりハードルを上げる必要はなく、1日5分でも1日1回でもよいです。

とにかく得た知識を実践につなげ、それに満足するクセをつけてください。

 

人間が変わるには行動が必須!知識で頭がガチガチにならないようにしたいですね(自戒の意味も込め)