封印された精神治療-ロボトミーの歴史、方法、効果、有名人、作品

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      2016/12/07

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本日のテーマは、『ロボトミー』

名前だけは聞いたことがあるという方も多いかもしれませんが、現在では存在しない精神外科という医療分野の中心となった存在でした。

かつてあった精神外科、その治療の中心となっていたロボトミー手術の方法、ロボトミー手術を受けた有名人や関連作品を紹介していきます。

当初は画期的な治療法と言われていたのがなぜ廃止になり事件を引き起こすまでになったのか、副作用でどんなことが起こっていたのか、早速見ていきましょう。


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ロボトミー手術の歴史と言葉の意味

ロボトミー手術というのは1936年に考案された精神外科の手術で、精神疾患の画期的な治療法として開始されました。

日本では1938年に新潟大学で最初の手術が行われ、1949年には考案者のエガス・モニスにノーベル賞が与えられました。(ロボトミーだけではなく脳造影撮影法の考案者としてでもあります)

1975年にロボトミー手術を主な治療法とする精神外科が日本精神神経学会によって否定されたことで、ロボトミー手術と精神外科はなくなりました。

ちなみにロボトミーという言葉の意味ですが、私はてっきり患者がロボットみたいになるからかな…?って思ってましたが、ロボットは『robot』、ロボトミーは『lobotomy』でつづりすら違いました…^^;

『lobe』は葉っぱを意味しており、前頭『葉』の切除術であることからついた名前だそうです。

 

ロボトミー手術の方法

以前『強迫行為-その時、脳内で何が起こっているのか?』という記事で、強迫的な思考と前頭葉に関わりがあることを紹介しました。

この前頭葉の問題を解決するために切除してしまおう!というのがロボトミー手術です。

やり方は主に3種類で、元祖となったモニス術式はメスで前頭葉を切るというものです。

アメリカのウォルター・ジャクソン・フリーマン二世が発明したのは鉄状の棒(あるいはアイスピック)で瞼の裏から刺して、前頭前野皮質の神経を切ります。

あとは、日本医科大学の教授が開発した眼窩脳内側領域切除術という方法もあります。

ロボトミー手術の画像はこちら(ちょっとショッキングなので注意)

 

ロボトミー手術の効果は?

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当初は攻撃性を抑えたり自分で自分の命を危険にさらしてしまうような患者への有効性が確認されたとして手術が行われました。

ですがうつ病患者の6%は手術の失敗により亡くなる、無気力、無感動、生活の一切が不可能となるといった副作用が起こっていたのも事実です。

先の眼窩脳内側領域切除術を考案した広瀬貞雄は1983年の『研究生活の回顧』でロボトミーの副作用を認めてはいるものの、少なくないケースで個人的・社会的に効果が見られたと回想しています。

 

ロボトミーは復活するか?

精神疾患と前頭葉、前頭前野がかかわっているというのは今でも支持されている理論です。

なので、脳に電気刺激を与えるという方法は実際に行われています。

関連エントリで具体的な方法や価格などを記載していますので、参考にしてください。

関連エントリ:うつ病の電気けいれん療法って?

ただ、脳に直接働きかけるからといってそれはロボトミーとは違うと私は思います。

直接切り取るわけではなく、当時に比べて医療技術も進歩しています。

仮に似たような手術が行われることになっても倫理的な観点や医療技術の観点からかなり厳しいチェックが入ることは間違いないので、ロボトミーの復活はないかなと感じました。

 

ロボトミー手術を受けた有名人-ローズマリー・ケネディ

第35代アメリカ合衆国大統領のジョン・F・ケネディの実の妹がローズマリー

もともと知的障害があり、20歳ころからは父親のジョセフ・P・ケネディからのプレッシャーもあってか、気分の変調や暴力などの問題が目立ってきました。

ローズマリーが自身の政治生命を断つ原因になるかもしれない…と思ったジョセフはローズマリーを女子修道院に入れたものの、彼女はすぐに修道院を抜け出してしまいます。

 

そこでジョセフは脳外科医に相談の上、妻や本人にも同意を得ずにローズマリーにロボトミー手術を受けさせることにしました。

前述の経眼窩術式を発明したウォルター・ジャクソン・フリーマン二世の執刀によって行われた手術はなんと失敗。

知的障害があるとは言えども小学4年生くらいだったローズマリーの知能指数は2歳のレベルにまで落ちたほか、尿失禁といった症状も確認されています。(のちの分析や検査によって手術前は正常値のIQであった可能性も指摘されいます)

ロボトミー手術,その後,ケネディ,有名人スペシャルオリンピックの様子
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/

ローズマリーはその後障害者施設に入所し、2005年に86歳で亡くなりました。

後に3歳下の妹であるユーニス・ケネディは知的発達障害のある人の自立・社会参加を目的にしたスポーツ組織である『スペシャルオリンピックス』を立ち上げました。

 

ロボトミーと漫画『ブラックジャック』

昔の漫画では今では差別になってしまう表現が描かれることがしばしばあり、そのため現在は発禁になっているものも多いです。

ロボトミー関連で発禁(自主規制)になった作品として手塚治虫作『ブラックジャック』の数話が挙げられます。

まずは『二人のジャン』というシャム双生児を描いた話。

ブラックジャックのセリフに『ロボトミー』があるほか、生体実験などひときわデリケートな問題を扱ったことも原因のようです。

次に『植物人間』

こちらは手塚治虫が回頭手術をロボトミーと書いてしまったために自主規制となりました。

最後に『快楽の座』

脳に機械を埋め込んで感情の制御を行う、というストーリー自体がロボトミーを想像させることからアウトとのこと。

医療漫画かつ警鐘を鳴らすという特性からか、『ブラックジャック』はなかなかヘビーですね…。

 

ロボトミーと映画『カッコーの巣の上で』

1962年に発売された小説を映画化した『カッコーの巣の上で』。

奇しくも日本精神神経学会が精神外科の否定決議を採択した年に公開されました。

刑務所での労働から逃れるために詐病で精神病院に入院したマクマーフィーという青年を中心に展開する話です。

物語後半でマクマーフィーがロボトミー手術を受けて快活さを失う様子が話題となりました。

 

ロボトミーが引き起こした2つの事件

ロボトミーによって引き起こされた事件のうち、特に有名なものは1979年に日本で起きた事件とロボトミー創始者のエガス・モニスに関する事件の2つです。

1964年にロボトミー手術を半ば無理やり受けさせられたスポーツライターが担当医師に復讐をもくろんで家に押し入った事件が、1979年の日本で起きたロボトミー関連の事件。

この事件では医師の母親と妻が亡くなっています。

もう1つのエガス・モニスの方もロボトミー手術を施した患者からの復讐によって脊髄損傷という重傷を負いました(1939年)。

1955年に亡くなるまで、障害を抱えたままだったと言われています。

 

hanami8精神科の歴史を調べているうちに気になったので書いてみたロボトミーですが、自分で書いててちょっとホラーみたいで怖くなってきました^^;

なお、アメリカではエガス・モニスのノーベル賞取り消しのための運動が行われているそうです。

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