自己愛性パーソナリティ障害の特徴と原因・心理を知ろう

記事の画像はイメージです。特定の人物を指すものではありません。

      2017/03/10

この記事の読了時間: 953

今回は3つのパーソナリティ障害の分類の中でも中核群に当たるB群の『自己愛性パーソナリティ障害』を紹介していきます。

自己愛性パーソナリティ障害については紹介したいことがたくさんあるので、2記事か3記事で完結する予定です。

まず1記事目に当たる今回の記事では、特徴と原因を詳しく見ていきます!

スポンサーリンク


自己愛性パーソナリティ障害とは

自己愛性パーソナリティ障害とはB群(劇場型)のパーソナリティ障害に含まれるパーソナリティ障害です。

簡単にいうと、『現実離れした理想の自分を認識する』傾向を持っています。

生涯有病率は1%程度、女性よりは男性に多いパーソナリティ障害でもあります。

 

自己愛性パーソナリティ障害の特徴

特別な自分がいる世界

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,とは,有病率,割合,女性,特徴

自己愛性パーソナリティ障害の方の世界には『素晴らしい自分、特別な自分』がいます。

傍から見ると現実離れしたような話も、彼らにとっては当たり前のスペックのように語られます。

家柄、能力、有名人が知人にいるなど、さまざまな場面での『特別な自分』が存在するのです。

 

3種類の他人

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,傾向,症状,人間関係,共感,優しい

自己愛性パーソナリティ障害の方にとっては3種類の他人がいます。

もちろん本人が意識的に3種類に振り分けているのではなく、何かの出来事や感覚をきっかけにそうなったと考えてください。

 

賞賛する他人

自己愛性パーソナリティ障害の方が強く求めているのが賞賛してくれる人です。

素晴らしい自分を認めてくれる人、言わば自分の舞台に来た観客のような要素を持った他人です。

自己愛性パーソナリティ障害の方は、このタイプの方に対しては鷹揚にふるまったり、優しさを見せることもあります。

 

自分を支える他人

ここでは、現実的に自分を支える他人を指します。

現実離れした自己愛のせいで、自己愛性パーソナリティ障害の方の中には後始末が必要な方がいます。

トラブルの後始末、あるいは日常生活を支えてくれる人が必要なケースがあるのです。

 

排除された他人

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,人間関係,恋愛,結婚,彼氏,彼女,夫,妻

排除された他人は、例えば自己愛性パーソナリティ障害の方の『特別な自分』を否定する他人などです。

少しの批判や意見など小さなことでも、排除された他人になる可能性があります。

自己愛性パーソナリティ障害の方にとって『特別な自分』は神聖な領域で、手を触れられては困る場所なのです。

 

他人は利用できる・できないの2択

賞賛する他人、自分を支える他人には時に優しい態度を見せたりもしますが、他人をありのまま理解しているわけではありません。

あくまでも『特別な自分のための』他人として見ているので、賞賛する他人に分類された人が何かのきっかけでいきなり排除された他人になることも。

排除された他人は『利用できない=特別な自分のために何の役にも立たない』ので、存在自体がなかったかのようにされます。

人によっては排除された他人に攻撃的な言動・行動をするケースもあります。

 

傷つきやすい

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,敏感,傷つきやすい

自己愛性パーソナリティ障害の方は『特別な自分』を周囲に見せながら歩いているので、一見すると自信に満ち溢れています。

ですが実のところ、とても傷つきやすいタイプなのです。

本当に『特別な自分』に自信があれば、他人に何を言われても意に介さないはずですよね。

自己愛性パーソナリティ障害の方が『他人を排除する』理由は、『特別な自分』を必死に守らないと崩れてしまうとどこかでわかっているからです。

 

特別な自分とそうでない自分

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,心理,なぜ

自己愛性パーソナリティ障害の方の中には『特別な自分』の陰に隠れた『特別でない自分』がいます。

もともとほとんどの方が、幼少期に『特別な自分』という感覚をどんどん大きくしていきます。

ですが、成長とともに『特別でない自分』も1つの自分の形として受け入れていきます。

自己愛性パーソナリティ障害の方の場合は大人になっても『特別な自分』と『特別でない自分』を1つの自分の形としてとらえるのが難しいのです。

 

自己愛性パーソナリティ障害のタイプ

アメリカの精神科医であるグレン・ギャバードは自己愛性パーソナリティ障害を大きく2つに分けました。

その他にも分類は色々あるのですが、今回はギャバードのものだけを紹介しますね。

 

無関心型(無自覚型)

自己愛性パーソナリティ障害,分類,タイプ,自己愛性人格障害,無自覚型,無関心型一般的に、自己愛性パーソナリティ障害と言って想像されるタイプです。

周囲から見ると傲慢なほど自信に満ち溢れていて、常に耳目を引きたいことが分かりやすいのが特徴です。

批判されると攻撃的にはなりますが、自分が傷ついているということには自覚がありません。

どこでも自分を賞賛してほしいので人間関係は広めで、どこにいても自分が主役という気持ちを欲しています。

 

過敏型(過剰警戒型)

自己愛性パーソナリティ障害,分類,タイプ,自己愛性人格障害,過敏型,潜在型,過剰警戒型

無関心型とは違って、自分の傷つきやすさを自覚しているタイプです。

自分が傷つかないために他人の顔色や気持ちを読み取る能力が発達しています。

 

また、周囲の評価に敏感な自分を自覚したうえで『特別な自分』を守るためには、行動を抑える必要があります。

限られた場所でのみ自己愛の強い自分を披露するか、あるいは妄想の中で『特別な自分への賞賛』を満たすこともあります。

社会的引きこもりの中には自己愛性パーソナリティ障害の方がいると言われるゆえんはここです。

引きこもれば傷つきやすい自分を確実に守って、しかも妄想の中で『特別な自分への賞賛』を満たせるのです。

 

自己愛性パーソナリティ障害のすごいところ

無関心型

自己愛性パーソナリティ障害,適職,自己愛性人格障害,過敏型,無自覚型

無関心型の方は社会的成功を強く望みながら、外へ外へと出ていくので、カリスマ的な人気を博す可能性があります。

たとえ表面的なものだとしても自信を感じさせる振る舞いを持つ人を尊敬したり、見習ったりする方も少なくはありません。

それに表面的な自信で始めたことが成功につながり、本当の意味での自信を持つきっかけになることも。

未開拓の分野に突き進んでいくのに適性があると言えます。

 

過敏型

過敏型の方は、内向的な部分と強い自己愛の両方を活かした生き方が可能です。

無関心型とは違って他人の気持ちを読むのが上手ですので、人の出方を見ながらスムーズにビジネスを進めていけるはず。

強い自己愛は自分なりの商品を作る原動力、特定の才能に昇華できる可能性があります。

傷つきやすいという点を考えると、自由度の高い自営業・自由業に向いていると私は感じました。

 

自己愛性パーソナリティ障害と遺伝

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,遺伝

2007年の国際神経精神薬理ジャーナルでは、B群・C群のパーソナリティ障害への特定の遺伝子変異の影響が紹介されています。

TPH2という遺伝子の変異が人間の感情に影響している可能性が指摘されたのです。

また、翌年2008年にノルウェーで1386名の双子を対象に行われた研究では、自己愛性パーソナリティ障害形質は24%の遺伝力と推定されました。

ただし、いずれの場合も遺伝のみではなく遺伝×環境という組み合わせがポイントとなっている点は同じです。

 

自己愛性パーソナリティ障害の原因

自己愛性パーソナリティ障害には上で紹介した遺伝と環境がかかわっていると言われています。

遺伝的な要素の他に、どのように自己愛性パーソナリティ障害の『特別な自分』と『脆さ』が生まれるのかを簡単に見ていきます。

※今回紹介した原因・考え方がすべてというわけではありません。

アーノルド・クーパーやカーンバーグなどの考え方を踏襲しつつ、わかりやすい言葉で説明しているにすぎませんので、必ずしもこの心の動きがあるわけではないことをご承知おきください。

 

養育者の態度

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,親,両親,母親,父親

自己愛に大きな影響を与えるのは親を中心とした養育者です。

アメリカの精神科医であるアーノルド・クーパーは『幼少期の激しい心理的虐待』や『親の自尊心を満足させるための手段としての評価』、『過度の賞賛』などを挙げています。

一般的には褒めるということは良いように思えますが、現実的ではない褒め方、過剰な甘やかしはやはり問題です。

また、親の自尊心を満たすための手段に子供がいるケースは少なからずあります。

親が叶えられなかった夢を叶える存在として、親のステータスを上げるための存在としてしか必要とされないのです。

 

無条件の愛がないと感じる

自己愛性パーソナリティ障害,原因,自己愛性人格障害,なぜ

養育者によって過度に褒められたり、利用されたりすると、今度は『自分への無条件の愛』はないと子供は感じます。

褒められてはいてもそれは『才能』や『頑張り』や『親の望む何か』に対してであって、自分そのものに対しては認められていないということに気づき始めるのです。

するとあっという間に子供は不安になり、親の期待に応えられない可能性がでてきます。

幼少期に親の期待に応えられないことは、生活等の安全を保障されないのとほとんど一緒です。

親なしでは生きていけないので、『無条件の愛がない』と感じることからくる虚しさをどうにかカバーしなければなりません。

 

価値のある自分を装う

自己愛性パーソナリティ障害,自己愛性人格障害,なぜ,愛情

虚しさ、不安から自分を助けるための手段はさまざまです。

その中で自己愛性パーソナリティ障害の方が子供のときに使った手段が上で紹介した『特別な自分とそうでない自分を分ける』という方法です。

特別な自分の陰にいる(不安を呼び起こす・危険な)『特別でない自分』は認識しないようにして自分を守ります。

結果的に周囲から見ると『ちょっと現実離れしてるな』というくらいの自分の姿を信じるようになります。

 

周囲のコントロール

理想化された特別な自分の姿を信じることで自分を守っているので、この『特別な自分』が侵害されることには非常に敏感です。

ここが自己愛性パーソナリティ障害の方の脆さを作り出している部分と言えるでしょう。

周囲の反応をコントロールしようとするか(無関心型)、コントロールできないと見るや撤退するか(過敏型)の違いはあります。

ですが、どちらも自分の作った『特別な自分』を守ることで安全を確保しようとしているのです。

 

 

参考文献・サイト

http://www.health.am/psy/narcissistic-personality-disorder/|Health.am

Tryptophan hydroxylase-2 gene variation influences personality traits and disorders related to emotional dysregulation|oxfordjournals

岡田尊司(2004)『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』PHP新書

岡田尊司(2004) 『人格障害の時代』 平凡社新書

磯部潮(2003)『人格障害かもしれない どうして普通にできないんだろう』 光文社新書

Stephen M.Johnson ph.D.(1987) 『Humanizing the Narcissistic Style』 W. W. Norton & Company

 - パーソナリティ障害