原始的防衛機制についてー7種類の原始的防衛機制まとめ-

原始的防衛機制についてー7種類の原始的防衛機制まとめ-
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今回は、防衛機制(自分の心を守るツール)の中でもより幼い子供でも使える『原始的防衛機制』についてみていきます。

原始的防衛機制の簡単な歴史、パーソナリティ障害との関係、7種類の原始的防衛機制を紹介します。

ちょっと長くなってしまいますが、ぜひぜひお付き合いください!

※今回、具体例がいくつか出てきますがすべて架空の話です!


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原始的防衛とは

1952年のメラニークライン

原始的防衛は、上記の写真のメラニー・クラインが概念化した防衛機制の一種

クラインが中心となって発展させた対象関係論から生まれた考え方です。

 

従来の防衛機制を語る上で欠かせないフロイトの考え方との大きな違いは、『超自我が形成される時期』にあります。

超自我は、心の中で倫理観を担当しています。

これはダメ!あれはダメ!と、イド(エス)の欲求を律するのが主な役割。

こう書くと悪い奴にも見えますが、みんなが社会で秩序を守っていくためには必要な存在ではあります。

 

さて、この超自我が形成される時期についてです。

フロイトは超自我の形成を4-5歳と考えたのに対して、クラインは生後1年程度と考えています。

そのため、クラインが概念化した『原始的防衛機制』は生後5か月くらいの乳児でも使えるのが特徴です。

基本的、原始的、なおかつ未熟な形の防衛機制といえるでしょう。

 

原始的防衛機制とパーソナリティ障害

悲しみと鬱々とする男性

原始的防衛機制はパーソナリティ障害と深いかかわりにあります。

特に境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害の方のものの考え方・特徴は、そのまま原始的防衛機制に当てはまることもあるくらいです。

身近にパーソナリティ障害の方がいる場合は、原始的防衛機制を知ることが理解の手がかりになる可能性もあります。

なので、パーソナリティ障害の記事群に合わせて、今回のお話もチェックしていただけたら嬉しいです。

パーソナリティ障害

 

8種類の原始的防衛機制

ここでは、分裂、原始的理想化、脱価値化、原始的否認、原始的投影、投影性同一化、取り込み、躁的防衛という8つの原始的防衛機制を見ていきます。

 

分裂

割れた窓ガラス

原始的防衛機制の中でも最も基本的かつ重要なのが、分裂です。

これは、1人の人の良い面と悪い面が分裂することを指します。

 

上述のクラインが発展させた対象関係論では、乳幼児と母親の関係(実際の関係と心の中の関係)を見ますが、そこに分裂を理解するポイントがあります。

赤ちゃんの時、『ミルクを飲みたい!』と思っても、すぐに飲める時とそうでないときがありますよね。

大人の場合は、その状況にあれこれの理由をつけることができます。

お母さんがちょっと家事をしていたから、すぐにミルクをあげられなかった、など。

哺乳瓶でミルクを飲む赤ちゃん

なので、大人の中では、あくまでも1人のお母さんに

ミルクをすぐにあげられる良い面

ミルクをあげるのを待たせてしまう悪い面

が存在します。

 

一方で、赤ちゃんはこの複雑さに耐えられないので、

ミルクをくれるときのいいお母さん(お母さん1)

ミルクをすぐにくれない悪いお母さん(お母さん2)

というように、お母さんがその役割によって2つに分裂してしまいます。

 

通常は、幼児期を通して徐々に子供は『ミルクをくれるお母さんも、ミルクを待たせるお母さんも1人の人間だったんだ!』と気づきます。

ところが、この分裂の傾向が大人になっても防衛機制として残ってしまうケースがあるのです。

何か危機があるたびに、『完璧に良い面』と『完璧に悪い面』でしか考えられなくなってしまいます。

そのため、自分や他人に対する気持ちや評価が両極端になる問題が起きます。

 

パーソナリティ障害と分裂

子供の目・涙

境界性パーソナリティ障害の方の場合は、自己像が『良い自分』と『悪い自分』に分裂しています。

現実には1人の人間なのに、常に『良い自分』『悪い自分』と完全に壁を作って分けてしまったら、当然矛盾が生じますよね。

実際に生きてみると、良い自分が出ることもあれば、悪い自分が出ることもあります。

境界性パーソナリティ障害の方は、その『統合された自分』に矛盾を感じます。

そのうちに、『結局自分って何なんだろう』と、自己像が不安定になります。

不安定な自己像を持っていると何をやってもむなしい、意味がないと感じ、人によっては破壊的な行動に出ます。

境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)の気持ち・行動の特徴

 

一方で、自分に対する高い評価(低い評価をカバーするための誇大的評価)を特徴とするのが、自己愛性パーソナリティ障害。

自己愛性パーソナリティ障害の方の場合は、自己像が『素晴らしい自分(良い自分)』と『何もできない自分(悪い自分)』に分裂しています。

『できないことも多いけど、この分野では得意な自分』とか『ちょっとわがままだけど、人情味のある自分』などという、中途半端な自己像は存在してはいけないのです。

 

普通、自分って大した事なかったんだなと思ったとしても、谷底に落ちたクズみたいな自分とは思いませんよね。

ところが、自己愛性パーソナリティ障害の方は、そうはいきません。

特別で素晴らしい自分でなければ、この世のすべてのクズを集めたよりさらにひどい自分になってしまいます。

自分が『この世のすべてのクズを集めたよりさらにひどいクズ』になってしまうのを防ぐために、自己愛性パーソナリティ障害の方は、時に攻撃的になったりもします。

自己愛性パーソナリティ障害の特徴と原因・心理を知ろう

 

原始的理想化

原始的理想化とは、『良い』『悪い』に分裂させたもののうち、良い対象の価値を引き上げることです。

これによって『分裂前の複雑な状態(1人にいいところも悪いところもあるというような)による混乱が少なくなる』のが最大のメリットです。

良いと判断されたものは、客観的な事実以上に価値が上がります。

やがて、半ば誇大妄想的な理想化が始まり、『この人は自分の望みを何でもかなえてくれるんだ』と本気で信じるまでに至ります。

 

脱価値化

怒りで紙を破壊する

上で原始的理想化を挙げましたが、いくら理想化しても実際に理想通りに動いてくれることはほぼあり得ません。

相手も人間なので、昔ミルクを待たせたお母さんのように、時には期待・理想通りにはいかないですよね。

その時、『良いもの』と『悪いもの』の統合に耐えられない心は、理想化したものを途端にこき下ろします。

それが脱価値化です。

『良いもの』が一気に、極から極へ『悪いもの』になる瞬間です。

今まで誇大妄想的に理想化していたことはすべてなかったことになり、こき下ろしの対象になってしまうのです。

 

脱価値化を行うことで得られるのは

・良いものと悪いものの統合をしなくてよい(分裂の強化)

・期待に応えてもらえなかった怒りを鎮められる(報復)

・相手から報復を受けるかもしれないという不安を鎮める(先制攻撃的な側面)

です。

 

原始的理想化と脱価値化の具体例

話し合うカップルの足

原始的理想化・脱価値化の防衛機制を持つある女性の話です。

その女性は、ある時知り合った男性をとても好きになり、付き合うことになりました。

 

マメで優しいところが好きで、彼は何もかも100%理想のパートナーだと感じるようになります。(原始的理想化)

ところが、実際に彼は彼女の望むことを何でもやってくれるわけではありませんでした。

忙しければ電話に出ないこともあるし、いつでも彼女を慰めてはくれません。(現実との不協和)

 

彼女は、心の奥底で『この人は理想の人だと思ったのに、期待が満たされない』ことに対して強い怒りを感じます。(良い面と悪い面の統合を拒否)

 

彼女の中で、理想の人だった彼は今や『ゴミみたいな男』に成り下がります。(脱価値化)

彼女は、自分でも押さえられない怒りによって、周囲に男性の悪い噂をばらまいてしまいます。(脱価値化と攻撃性)

 

原始的否認

耳をふさぐ女性

否認とは、どうあっても認めないことを指しています。

客観的な事実をなきものにして、妄想めいた世界に傾倒したり、周囲の意見に耳を傾けなくなったりします。

一般的な防衛機制にも否認はありますが、原始的否認の場合は、『分裂を強化する』ために行われるのが大きな違いです。

分裂、原始的理想化、脱価値化などの一連の動きを正当化するために、原始的否認が用いられます。

 

原始的否認の具体例

指を指すビジネスマン

自己愛性パーソナリティ障害的な特性を持つ男性の例です。

その男性は、有能な自分以外は認められません。(有能な自分と無能な自分を分裂させる)

ところが、ある時仕事で大きなミスをしてしまい、上司にひどく責められました。(現実との不協和)

男性は、どうあっても無能な自分を認めるわけにはいかないので、様々な考え方で自分を守ります。(原始的否認)

例えば

あのミスは自分によって起きたのではなく、部下の〇〇が資料をきちっと作ってこなかったからだ

自分に嫉妬している奴がいて、そいつに足を引っ張られてしまったんだ!

などです。

 

そこには妄想めいたことが含まれたり、嘘も含まれたりしますが、男性にとっては『(分裂された)素晴らしい自分を守ること』が最も重要です。

なので、他人の迷惑や嘘による自分の信頼の低下などは、とりあえず考えない問題として処理されます。

 

原始的投影

ビデオカメラ

投影は、自分の中の認めたくない部分を相手に映し出すことを指しています。

人に悪口を言ったり、人の粗が気になるときには、特に投影を疑う必要があります。

『あいつって偉そう』と思っているとき、本当は自分自身が『自分って偉そう、でもそれを認めたくない』と感じているのかもしれません。

原始的投影は、原始的否認と同じように『分裂を強化する』という役割を持っています。

分裂させた自分の悪い面を相手に映し出すのですね。

一般的な投影に比べると、極端かつ激しい感情を伴うのが特徴です。

 

投影同一化

豚の人形

投影同一化とは、認めたくない自己像を相手に投影して、その関係性通りに動くように相手を操作しようとすることです。

ちょっとわかりにくいので、具体例で理解していただけたら嬉しいです^^

 

投影同一化の具体例

ある女性は、長いこと両親から『お前は本当にダメな子だね』といわれて育ちました。

ですが、彼女は良い自分と悪い自分が、1人の人間であると認められません。(分裂)

『ダメな子』の自分はどうしても認めるわけにはいきません。

そこで、『ダメな子』の部分を、ある友達に投影します。(認めたくない自己像を他者に投影)

 

その友達は最初自分のことをダメだとは思っていなかったのですが、女性は友達に『自分はダメな子』と思わせるような作戦に出ます。(対人操作)

ちょっとしたミスを派手にあげつらう

何もできない子供かのように扱う

といったことを無意識に行って、自分が認められなかった部分を相手に経験させるのです。

 

ポイントは、投影のターゲットになった友達が、本当に『自分はダメだ』と感じたり、そう感じているようなふるまいをしてしまうことです。(相手がその関係性通りに動いてしまう)

ある女性も、友達も自覚していることではないのに自然とそのようになってしまうのが投影同一化と一般的には言われています。

 

結果として、関係性はこのように変わります。

ダメな子の役割は、ある女性から友達へ

ダメな子を叱る親の役割は、ある女性の親からある女性へ

 

躁的防衛

ジャンプする楽しげな男性

躁的防衛とは、一見明るく見える形で心を守ることです。

生きていれば、誰か大切な人を失ったり、人を傷つけた時に不安や悲しみを感じますよね。

健全な心であれば、一時的とは言え鬱々とした気分になります。

その状態から自分なりに手さぐりに、時には人の力も借りながら回復していきます。

 

ですが、躁的防衛を行う人の心の中ではそうではありません。

一瞬たりとも鬱々とした気持ちに浸るわけにはいかないのです。

鬱々とした気持ち、悲しい気持ちに対する拒否感が強く、『この感情は危険だ』と無意識下で判断されます。

この不快な感情を消し去るために、躁的防衛が行われます。

具体的には、相手を軽視したり攻撃したり、何か別のものに逃げたりといったことが挙げられます。

上記の脱価値化、原始的否認などともかかわりが深いです。

 

躁的防衛の具体例

愛の終わり

例えば、恋人に振られたある男性がいるとします。

その男性は、恋人に振られて悲しむということに耐えられないので、心の防御ツールの1つとして躁的防衛を用います。

 

まずは、相手の価値を落として悲しみをごまかします。(脱価値化的側面)

『あんな女大したことなかったんだから、別れてせいせいした』というような感じです。

こうすることで、『自分は大切なものを失ったのだ』という事実に向き合わなくて済みます。

 

次に、優越感を通して悲しい気分を躁的に持っていきます。

『俺は〇〇大卒だし金もあるから、もっといい女が間違いなく来る』と感じることで、自分自身の優越感を再認識します。

すると、ちょっと明るい気持ちになれますよね。

同時に、万能感を得る可能性もあります。

 

原始的防衛機制のまとめ

OKを意味するジェスチャー

・原始的防衛機制とは…生後5か月ころから見られる防衛機制(心を守るツール)

・分裂…混乱を避けるために他人・自分の良い面と悪い面を分裂させ、1人の人間として見ないこと

・原始的理想化…分裂させた良い面を誇大化・理想化することで、分裂を強化すること

・脱価値化…原始的理想化されたものが崩れた時に、一気に価値を失わせてこき下ろすことで、分裂を強化すること

・原始的否認…分裂を強化するため、客観的な事実を認めないこと

・原始的投影…分裂させた悪い面を相手に映し出すことで、分裂を強化すること

・投影同一化…分裂させた悪い面を相手に投影し、あたかも相手がその面を持っているかのようにふるまうよう操作すること

・躁的防衛…悲しみや罪悪感から目をそらすために、一見すると明るく見える方法で自分の心を守ること

 

 

原始的防衛機制についてまとめて紹介しました!

もしもここまで読んでくださった方がいたら、本当に本当にありがとうございます><。。