防衛機制の『退行』とは-赤ちゃん返り・幼児退行-

記事の画像はイメージです。特定の人物を指すものではありません。

      2017/10/16

この記事の読了時間: 89

自分の心を守る無意識のツールである『防衛機制』。

その中でも今回は『退行』についてみていきます。

どんなメカニズムで起きるのか、どんな具体例があるのか、対応の仕方は、という部分をさっそく見てみましょう~^^

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防衛機制の退行とは

退行とは、それまでの発達状態から戻ることを指しています。

その年齢よりもかなり幼い行動・表現が特徴的です。

退行は、赤ちゃん返り、幼児退行の原因の1つでもあります。

ちなみに、退行が起きる原因には防衛機制のほかに脳損傷・脳疾患なども考えられます。

 

退行の具体例

哺乳瓶でミルクを飲む赤ちゃん

・第二子が生まれてから急に赤ちゃん返りするようになった第一子

・お酒に酔うと誰にでも甘えてしまう大人

・家の中ではパートナーから一切離れようとしない大人

・今まではできていたのに、着替え・風呂・食事を誰かに手伝ってもらうようになる

・その年齢には必要ないにも関わらず、哺乳瓶でミルクを飲みたがったり、離乳食を食べたがる

 

退行が起きる仕組み

超自我、自我、イド(エス)

ここでは、子供・大人の2つの例で退行が起きる仕組みを紹介します。

なお、フロイトの精神構造の3役者が今回も出てきます。

詳しくは、防衛機制の仕組みの記事で紹介しています。

 

簡単に言うと…

イド(エス)…今すぐあれしたいこれしたいという欲求を投げかけてくる

超自我…親に言われたことなどで作られた倫理観

自我…イドと超自我のバランスを取りつつ、外界ストレスにも対応する苦労人

 

第二子が生まれて退行を起こした第一子の場合

赤ちゃんとお父さんとお母さん

第一子は、生まれてからしばらくは親の愛情を独り占めにできる期間がありますよね。

それだけに、弟や妹が生まれると、独り占め期間が終わることに寂しさを抱えてしまう傾向も見られがち。

『弟が生まれてから僕は全然かまってもらえない、最近はお父さんもお母さんも赤ちゃんばっかり…』という気持ちになってしまうんですね。

 

その時、欲求をつかさどるイド(エス)は『今すぐもっと僕だけをかまってほしい!!』と強く欲求を押し出してきます。

年齢が幼いとまだ超自我が出来上がっておらず、その欲求を親にダイレクトにぶつけますが、親も要求に応えてあげられないときがあります。

自我はイド(エス)と外界でのふるまいのバランスが取れず、追い詰められます。

子供の目・涙

そこで、まずはイド(エス)の欲求(かまってほしい)を無意識下に抑圧します。

ですが抑圧したものは出てきたがる性質があるのが問題です。

 

抑圧した『かまってほしい』は、実際にかまってもらえる方法として外界に登場。

それが『赤ちゃんに戻る』という方法です。

 

『何もできない赤ちゃんに戻れば、自分も弟と同じようにかまってもらえる』

のです。

 

防衛機制は無意識で行われるので本人はこのような気持ち・仕組みには基本的には気づきません。

 

幼児退行した大人

カップル、パートナー

幼児退行して、食事や着替えをパートナーに手伝ってもらうようになった大人の場合です。

大人の幼児退行には外的ストレス・外的な圧迫感のかかわりも大きいです。

 

大人になると求められるスキルが増え、複雑な人間関係、ノルマの厳しい仕事をこなす必要がある方も多いはず。

その中で、イド(エス)は『もう嫌だ!すべてから逃げ出したい!つらい!』という気持ちを大きくします。

一方で、倫理観を担当する超自我は、『すべて逃げ出すなんてダメだ!大人は働かなきゃダメだ!』とイド(エス)を押さえつけます。

実際にすべて投げ出すのは難しい状況もありますよね。

 

自我はだんだん超自我、イド(エス)、外界の状況の3つに挟まれて苦しくなり…

『過去(未熟な自分)に戻っちゃえばいいんだ!』

と退行を選びます。

 

未熟な子供なら投げ出してもいいので、イド(エス)の願いである『全部投げ出したい』を叶えられます。

未熟な子供ということは、大人ではないので、超自我の倫理観である『大人は働かなきゃダメだ!』も無事突破。

 

外界の状況はともかくとして、とりあえず自我としては三者に責められる状況だけは回避できます。

そこで、未熟な段階に戻った人間としてふさわしいふるまい、食事や着替えの手伝いが必要な状況を作ります。

 

3種類の退行

退行には、病的退行、治療的退行、創造的退行(健康な退行)の3種類があります。

 

病的退行

絶望する男性

病的退行とは、名前の通り治療が必要な段階の退行です。

ポイントとしては

・長期的

・本来の発達段階まで戻ってこれない

・自分の意志で制御できない

という3点があります。

先ほどの例でいえば、様々なストレスですべてを投げ出した状態が何年も継続している状態は、病的退行です。

 

治療的退行

カウンセリング

治療的退行は、治療中に起きる一時的な退行のことです。

精神分析の面接やカウンセリングでは、一時的に退行が見られることがあります。

ですがそれはあくまで治療の流れの中では普通のことなので、継続的にしっかりと治療に取り組めば退行も自然と収まります。

 

創造的退行(健康な退行)

チョークアートをする女性

精神分析家のE・クリスは『創造的な退行』というものがあると指摘しました。

これは、病的退行とは異なり

・短期的

・一時的

なのが特徴。

お酒を飲んで子供のように甘えるけど、次の日にはちゃんと大人の自分に戻れるのは創造的退行です。

 

創造的退行は、ある意味で大人ならではのしがらみを取り除く方法ともなります。

子供の発想って大人のそれとは違って、すごく自由ですよね。

芸術家や革新的な技術を生み出す人は、上手に創造的退行を利用しているともいえるのです。

 

また、革新的・芸術的でなくとも、創造的退行はストレスを解消するよい手立てになります。

家で幼児退行してお人形遊びをしていても、パートナーとの関係や社会生活が良好なら、それはよいストレス解消であり、創造的退行です。

 

赤ちゃん返り・退行への対応

子供の赤ちゃん返り

父と息子

小さな子の赤ちゃん返りでは、その子の年齢より2歳下の子に接するような気持ちで、しっかり甘えさせてあげることが重要と言われます。

実際に上の子の赤ちゃん返りを体験した友人に聞いてみたところ、

・上の子だけの時間を作ってあげる

・下の子の面倒を見たことを大げさなくらい感謝する

といった方法で、その子の場合は問題解決に向かったそうです。

また、赤ちゃん返りに伴って起きるおねしょやぐずりに親が深刻になりすぎないことも大切だと語っていました。

 

お年寄りの幼児退行

池を見るお爺さん

お年寄りの幼児退行では、まず脳の検査が重要です。

例えば認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症では、幼児化が見られやすいです。

アルツハイマー型認知症は現在の医学では治すことはできませんが、症状の進行を遅らせることはできます。

適切な治療で症状の進行を遅らせ、幼児退行も遅らせられる可能性はあります。

 

薬以外の部分では、『自尊心を守ってあげる』ことがとても大事なんじゃないかと私は感じています。

祖父母が要介護状態になったときを思い出してみると、甘えたがるけどプライドがないわけではないんだな、と感じた記憶があります。

大人としての自尊心を守りながら、子供としての要求も適宜かなえてあげながら、日常生活のレベルを落とさないように自分でやらせながら…正直、すごく難しいですよね。

 

なので、私の祖父母の経験談(といっても少ない経験ですが)からは、プロのお手伝いも必須と考えています。

『さじ加減』については、日々たくさんのお年寄りに接していて、知識もあるプロの意見を参考にするとよいのかなと。

 

大人の幼児退行

リラックスしたカップルと谷

大人の幼児退行は、ストレス解消の一種であることが多いです。

仕事の繁忙期に一時的にそうなってしまうという程度なら、本人・周囲ともに『甘えたい時間』を大切にするのもアリだと思います。

 

一方で

・継続的

・幼児退行のせいで生活が立ちいかない

・相手の幼児退行のせいでこちらの精神が持たない

というときには、やっぱり現実的な対応が必須ですよね。

 

ただ、基本的には退行は防衛機制、つまり無意識でやっていることなのでそこを気づかせるところからがスタート。

お年寄りの幼児退行と同様に、プライドや自尊心の問題もあるので、プロの力を借りてさじ加減を学ぶのも1つの手かもしれません。

 

私も疲れた時はぬいぐるみと脳内会話してます…!

防衛機制を知ってからは、ストレスたまってるんだなー、いろいろつらくて退行してるんだなーと思って、スケジュール調整の基準になったりする便利アラームです。

 

参考サイト:【育児専門家に聞く】赤ちゃん返りは2歳~3歳に注意?対処法は?

 - 防衛機制