ストックホルム症候群とは?なぜ起きるの?実際の事件も紹介

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      2017/07/17

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誘拐事件などで監禁され、犯人と長い時間一緒にいると犯人に恋愛感情を抱いたり、連帯感を抱いたりするのが特徴の『ストックホルム症候群』

テレビなどで何度か紹介されたこともあり、私も以前から興味を持っていた心理状態の1つです。

一体どうしてそんな心理状態になってしまうのか、実際にどんな事件でストックホルム症候群が見られたのか、どうすればストックホルム症候群を治療できるのかなどを見ていきます。

ストックホルム症候群とは逆のリマ症候群についても軽く紹介していますので、参考までに。

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ストックホルム症候群とは?

1973年8月にストックホルムで起きた銀行強盗・立てこもり事件が由来になって生まれた言葉です。

犯人のヤン=エリック・オルソンは計9人(立てこもった日に交渉により5人が解放)の人質を取って銀行に立てこもりました。

6日間にわたる立てこもりの末、人質は大きな怪我なく解放、オルソンも無事に逮捕されたのです。

と、まぁここまではよくある銀行強盗、立てこもり事件です。

 

ところが、後に警察が捜査したところによると、オルソンが寝ている間に警察に銃を向けていたのは人質だということが発覚。

おまけに、すでに解放されているのに人質がオルソンをかばうような証言をしたこともわかりました。

これにより、ストックホルム症候群(シンドローム)という心理状態に注目が集まりました。

特徴は以下です。

 

・犯人と被害者には連帯感、共感がある

・犯人と被害者は閉鎖空間で長時間一緒にいる、同じ非日常体験を共有する

・ケースによっては恋愛感情を抱くこともある

 

なぜストックホルム症候群になるの?

ストックホルム症候群,ストックホルム症候群とは,由来,意味,事件ストックホルム症候群は病気ではなく心理の一種で、『極限の状態が生み出す合理的判断』と言われることがあります。

突然命の危機を感じる状況に陥ると(誘拐・監禁等)、人間の心は『生き延びる』ことだけを考えるようになります。

そこに欠かせないものの1つが『共感力』。

強大な力を持つ犯人の主張に共感し、少しの親切(食べ物の供給など)に好意と深い感謝を持つことは自分が生き残るためにはもっとも適した方法です。

つまりもともと自分に犯人の主張や主義に同意する部分があったのではなく、生き残る・生き延びるために心理の錯覚を起こしている状態ということです。

 

吊り橋効果とストックホルム症候群

ストックホルム症候群,恋愛,吊り橋効果,心理学,類似,違い恋愛をうまく運ぶためのちょっとしたテクニックとしても使われることがあるのが吊り橋効果。

2人で高い場所にある吊り橋を渡ると、吊り橋への恐怖を恋愛と勘違いして好意が生まれやすいという効果です。(実際の効果や実験方法についての疑問はいろいろありますが…)

恐怖や不安を感じた時に出るノルアドレナリンは恋愛のドキドキ感を感じる時にも出るので、錯覚が起きてしまいます。

 

ストックホルム症候群と吊り橋効果がまったく同じというわけではありませんが、『恐怖のノルアドレナリンを恋愛と誤解』という点は共通している部分の1つです。

誘拐・監禁などは多くの人にとってまず体験することのない特殊な環境。

通常では考えられないほどの緊張・恐怖で出たノルアドレナリンを恋愛と勘違いしてしまう可能性もけして低くはないですよね。

 

ストックホルム症候群の反対もある!

ストックホルム症候群,反対,リマ症候群,心理,逆誘拐・監禁といった特殊な現場にいる人間は人質だけではありません。

犯人もこの特殊な環境の心理的な影響を受けると言われているんです。

ストックホルム症候群の反対とされるリマ症候群は、犯人が被害者に親近感を持つこと。

 

この言葉が生まれたのは1996年12月から1997年4月まで、なんと4ヶ月にもわたった『在ペルー日本大使公邸占拠事件』のときでした。

このとき、犯人であるトゥパク・アマル革命運動の構成員の一部は、日本語を学んだり他国の文化に興味を示すことが多かったとのこと。

最終的には強行突入によって解決した事件ですが、その際も人質に銃を向けることをためらい、部屋を飛び出した構成員が確認されています。

この『リマ症候群』が起きるにはいくつかの条件が必要なようです。

 

・被害者がストックホルム症候群に陥っている

・犯人が被害者(人質)よりも極端に少ない→上述の在ペルー日本大使公邸占拠事件では犯人14人に対して人質72人(解放時)(事件当初は600人以上)

・犯人の学識・教養レベルが被害者(人質)よりも低い→構成員は教育をほとんど受けていなかったのに対し、人質は松下電器の駐在員やペルー軍将校、日本大使館員など

 

家庭内にもストックホルム症候群がある?

ストックホルム症候群,家族,トラウマティック・ボンディング,共依存,恋人,DVDV加害者・被害者のパートナー間に、虐待を受けた子供と親の間にも被害者が加害者に好意を持ったりかばったりということがあります。

原理的には『自分の命を守るための合理的な判断』がある点ではストックホルム症候群と似ていますが言葉としては使いません。

 

例えば合理的な判断に加えて、被害者の支配性(加害者の問題に振り回される自分にしか価値を感じないなど)があれば共依存です。

また、最近では家族関係やパートナー関係におけるストックホルム症候群のような心理を『トラウマティック・ボンディング』と呼んだりもします。

 

言葉の上での違いはありますが、基本的な心理は似たようなものと考えても問題ありません。

特にサポートする側としては、被害者がサポートに応じない時の心理として一考する必要があると思います。

共依存に関しては以前まとめた記事があるので、そちらを参考にしてみてください↓

わかりやすい『共依存』の話-どうしてあの人から離れられないのか-

 

実際に起きた事件は?

ストックホルム症候群が確認された事件は、上で紹介したオルソンによる銀行強盗事件以外にもあります。

ここでは国内外の事件の中からいくつか紹介していきますね。

 

パトリシア・ハースト誘拐事件

ストックホルム症候群,事件,パトリシア・ハースト画像出典:https://en.wikipedia.org

ストックホルム症候群が実際に起きた例として紹介されることが多いのがパトリシア・ハースト誘拐事件。

1974年、新聞社社長の娘であるパトリシア・ハーストが左翼過激派組織に誘拐されたのですが、パトリシアは2か月後には組織とともに銀行を襲撃

さらに2か月後にはタニアという名前を名乗り、組織の同志になったことを伝えるカセットテープを放送局に送りました。

その後1年3ヶ月の逃亡の末逮捕、裁判、懲役7年の判決(後に特別恩赦)と仮釈放を経て出所、その後は映画に出たり社交の場で活動しています。

 

ショーン・ホーンベック誘拐事件

アメリカ・ミズーリ州で起きたショーン・ホーンベック誘拐事件もストックホルム症候群の代表例と言えるでしょう。

2002年、11歳のときにレストラン従業員の男に誘拐・監禁されたショーンは4年間を犯人の家で過ごしました。

インターネットにアクセスできる環境にあったことや逃げるチャンスが何度かあったにも関わらず逃げられなかったのはストックホルム症候群の影響ではないかと考えられています。

 

よど号ハイジャック事件

ストックホルム症候群,事件,日本,よど号1970年に日航機『よど号』が共産主義者同盟赤軍派の学生9人にハイジャックされた事件です。

ハイジャックされたのが3月31日、乗客が解放されたのが4月3日ということで、人質は数日にわたって異常な環境の中で生き延びなければなりませんでした。

ある乗客は解放される際に犯人グループに対して『頑張って下さい』と激励したそうです。

犯人側も緊迫した環境にいたのは同じで、乗客解放の前にはリーダーの田宮高麿が別れを主題にした詩吟を謡い、乗客の1人が旧制旅順高等学校の愛唱歌である『北帰行』を返歌としたという話があります。

このことから、ストックホルム症候群だけではなくリマ症候群(に近いもの)も見られたのではないかと思います。

犯人が人質よりも学識のレベルが確実に低いことはなかったと思いますが、犯人の人数が人質よりも少なかった、人質がストックホルム症候群に陥っているといった条件は満たしています。

 

ストックホルム症候群の治療って?

ストックホルム症候群,意味,治療,治す,対処命の危険を感じて現れる心理状態の1つともいえるストックホルム症候群。

精神医学上分類される病気ではないので、そのものに対する治療の枠組みが決まっているわけではありません。

ただ、もともと特殊な環境で起こり得る心理状態ということで、解放されその環境を離れることこそが治療・対処の要と言えます。

そこにプラスして、PTSDの治療が必要となるケースも多いようです。

特に数か月、数年単位での暴行を伴う監禁では、その後長い期間フラッシュバックを始めとした症状に悩まされる危険性があるからです。

 

hanami7欧米のサイトだとストックホルム症候群の当事者によるインタビューなども掲載されていて、なかなか読みごたえがありました!

いざその状況になったら私もストックホルム症候群になるんだろうなぁ…。

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