怒ると疲れる仕組みって?疲れない怒り方を考える

怒ると疲れる仕組みって?疲れない怒り方を考える
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怒るとスッキリする人がいる一方で、怒ると疲れる人もいますよね。

私は小さいころから怒らない性格といわれることが多かったのですが、別に怒っていないわけではなく怒ると体がどっと疲れるので、それが嫌で人に怒らなかっただけでした。

なんで怒ると体が疲れていたんだろう?という疑問を解決すべくいろいろと調べてみたので、それをシェアしたいと思います!

 


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怒りとホルモンと自律神経

感情とは、身体反応を可視化して言葉にしたものだといわれています。

つまり、感情と体は切っても切り離せないということ。

怒ると頭がギューッと縮むような感じがしたり、うれしいと足元がふわっとしたり…人によって違いはありますが、普通に生きていれば感情と体は必ずつながっています。

では、今回のテーマである『怒った』ときの反応はどんなふうになっているのか見てみます。

 

怒ったときの体の変化

怒りのシステム

私たちが『怒り』を感じているとき、情動に関する脳の部分である扁桃体から体に指令がでます。

その指令は『アドレナリンを出せ!』で、実際にアドレナリンを出すのは脳ではなく副腎という器官です。

副腎は両方の腎臓のそばに1個ずつある5㎝程度のものですが、さまざまなホルモンを分泌しています。

アドレナリンは副腎から分泌されるホルモンの1つです。

アドレナリンが副腎から分泌されると、アドレナリンの作用によって自律神経系のうち交感神経系が興奮します。

交感神経系優位の状態は、いわゆる緊張状態です。

心拍数が増し、筋肉がカチッと固まり、瞳孔が大きくなります。

この体の変化を扁桃体が読み取って、再びアドレナリンを分泌を命令することで、さらに怒りの感情は大きくなっていきます。

 

ただし、怒りの感情は無限に大きくなるわけではありません。

扁桃体を含む大脳辺縁系の動きは、思考や判断の役割を担う前頭葉によっても制御できます。

あるいは、怒ったことによって受け取る刺激の質が変わったりして、それが扁桃体の反応を変えることもあります。

いずれにしても重要なのは、怒りはずーっと続くわけではないということです。

 

怒ったときの疲れ1.交感神経系優位による疲れ

疲れて眠る女性

さて、本題の『怒ったときの疲れ』についてですが、まず1つは交感神経系優位による疲れが挙げられます。

当サイトでは何度か自律神経に関する記事を書いていますが、ここで簡単におさらいします。

自律神経には交感神経系・副交感神経系があります。

基本的には、交感神経系は緊張、副交感神経系は弛緩と考えてください。

交感神経系と副交感神経系は、適宜優位になる方が変わることで健康な体の状態を保っています。

それが怒りによって交感神経系が優位になる現象が続いたり、あるいはしょっちゅう交感神経系に切り替えられたらどうでしょうか?

体が緊張しっぱなしなので、次に必要なのは弛緩ですよね。

何らかの要因で怒りが解けて『ホッ』とした瞬間に、体が一気に副交感神経系優位に切り替わります。

副交感神経系が優位だと眠くなるので、怒った後は疲れるなぁと感じるわけです。

 

怒ったときの疲れ2.副腎疲労

疲れたダンボー

扁桃体からの指令でアドレナリンを分泌する役割を担っている副腎

副腎の役割はさまざまなホルモンを作ることですが、本来これらのホルモンは一定のペースで作られるものです。

ところが怒ると急に大量のアドレナリンが必要になり、交感神経系優位な状態になったら扁桃体が再び怒りを増幅させてアドレナリンが必要になるという問題がでてきます。

一定のペースで仕事をしていたのに、急に大量の案件を任された社員みたいな感じです。

普通の仕事をしながら急な仕事にも対応していたら、当然終わった後はドッと疲れますよね。

 

怒っている最中に力が抜ける場合

倒れる女性

怒った後に疲れるんじゃなくて、怒っている瞬間にガクッと力が抜ける場合、まったく別の原因が考えられます。

それはカタプレキシー(情動脱力発作)と呼ばれる発作症状です。

怒りや喜びなどの感情によっていきなり力が抜けてしまい、人によってはそのまま転倒することもあります。

ナルコレプシーという睡眠障害を抱えている方には、このカタプレキシーを併発するケースも多いとのこと。

ちなみに、ナルコレプシーは日本人では600人に1人に見られる症状です。

怒っているときに急に倒れたりした場合は、一度病院に行って診察を受けるのがおすすめです。

 

怒りで疲れないために

机の上の電球

正直、体がこんなに疲れるんだったら怒ること自体やめたいなぁと思うこともありますよね?

怒り自体をなくすことは不可能です。

人間としての体を持ってしまった以上、快・不快は何らかの刺激によって判断されますし、体はそれに合わせて変わってしまいます。

これは1つの機構です。

そこはもうあきらめるしかありません。

人間に生まれた以上怒ることはあるし、それで心臓がバクバクしたりすることもあります。

逃げられない以上、大事なのは『疲れない怒り方』にあると私は考えます。

そのための方法を少し提案しますね。

 

身体反応、ルールに気づく

眼

疲れない怒り方の1つ目のポイントが、身体反応やルールに気づくことです。

・身体反応→怒ったときの体の状態

・ルール→怒りポイント(このポイントを刺激されると感情が出るようにプログラムされているもの)

これを探っていきます。

探ることによって、怒りの身体反応・ルールが出た瞬間に対処できるのです。

なんで怒ってるかわからないのに怒りをどうにかしたいというのは、やはりとても難しいです。

怒りを事前に察知する能力、怒りに巻き込まれない能力のための基礎が身体反応とルールの発見と考えてください。

後述する『怒りの生産・再生産をストップする』という項目で、ここで調べた身体反応やルールを使います。

 

最初にやるなら、ルールよりも身体反応がわかりやすいかなと私は思います。

怒っている最中に、『今体に起きていること』を観察します。

胸が締まるような感じ、顔が熱くなる…などなど。

とにかく体に起きていることを観察して、きちんと覚えておきます。

紙に書く

次にルール探しです。

ルールとは、植え付けられた怒りポイントです。

例えば幼いころから『食事中は静かにするように』と教えられたら、『食事中うるさいことに対して怒りが湧く』んです。

そういうルールにいつの間にかなっています。

同時に、内省的で完璧主義的な人にとっては自分自身を縛り付けるルールにもなってしまいます。

最初のうちは怒りの最中にルールを探すのは大変なので、怒りが静まったあとでまとめることにします。

後述する『怒りの再生産をストップする方法』などを参照に、怒りが収まったら作業開始です。

1日の中で決まった時間にルール探しの作業を取り入れてもよいかもしれません。

 

やり方はとても簡単です。

・怒った状況の前にあったことをまとめる

これだけです。

 

身体反応に気づく練習がうまくなってくると、ピリピリした瞬間(怒りの前段階)がわかります。

その場合、ピリピリした瞬間の直前で大丈夫です。

まだ身体反応に気づくのが得意ではなく、気づいたら怒りが爆発している場合は、直前よりももう少し前の状況までまとめましょう。

これを1度ではなく怒るたびに行います。

するとそこには共通点が出てきますので、それを怒りポイントと認定します。

 

怒りの生産・再生産をストップする

止まれの交通標識

怒りの身体反応・ルールがわかると、自分が怒るであろう状況や怒った瞬間を察知できます。

ここで怒りを生産しない、あるいは再生産しなければ疲れを減らすことも可能!

そのための方法を2つ紹介します。

 

意図的に体をリラックスさせる

怒るであろう状況が来たら、あるいは怒りによって体の反応が出ていることがわかったら、まずは意図的に体をリラックスさせます。

そうすることで体からの情報を受け取った扁桃体は『あれ?そんなに不快なわけでもない?』と勘違いしてくれます。

これにより一時的に怒りが和らぐほか、繰り返すことによって『これって怒りとつながってないんじゃ?』と感じるようになります。

 

例えば、食事中人がうるさいことで怒るケースを見てみます。

友達とパーティ

食事中誰かが話し始めた段階で、あらかじめ体をリラックスさせます。

この時点では扁桃体は相変わらず『食事中に人が話している=不快』と思って、アドレナリンを出すよう副腎に要求します。

副腎は要求通りアドレナリンを出しますが、体はただ緊張するだけではなくリラックスの状態も含んでいます。

緊張とリラックスが混ざった体の状態を察知した扁桃体は、『緊張100%よりも不快が少ない』と判断しますよね。

するとアドレナリンを分泌させる必要もなく、怒りが再生産されません。

これを繰り返すと、そのうちに『食事中誰かが話し始めた=身体的にリラックスしている≒不快ではない』という新しいルールができます。

そうすれば、怒りポイントが変化し、話しながら食事を楽しめるというわけです。

オフィスの本と椅子

体を意図的にリラックスさせる方法にはいろいろありますが、私は『筋弛緩法』をおすすめします。

一度体をギューッと緊張させて力を抜くだけの方法です。

人目が気になるときも、足の指やお尻などあまり動かない場所に力を入れれば目立たないのでやりやすいのが一番のおすすめ理由です。

筋弛緩法によって気分が変わるという立命館大学の研究もあります[1]

 

まとめると、

・怒りポイントが来そうな状況で、あるいは怒りの身体反応が出た状態ですぐに体をリラックスさせる

・すると扁桃体が不快指数が下がったと勘違いして、怒りの再生産をストップする可能性が高い

・何度も怒りの再生産をストップしているうちに、怒りポイントが変わる可能性が高い

 

得られる効果は

・怒りの生産や再生産をストップできる確率の上昇

・怒りポイント自体を無効化できる可能性

※根深い怒りポイントが数回の実践で変わるわけではないと私は考えています。

 

心のおしゃべりを止める

川と森

上記の体のフィードバックを変える方法は様々な場面で効果を得られる可能性がありますが、ここで紹介する『心のおしゃべりを止める』は怒りの再生産を防ぐ目的があります。

いくら怒りポイントを観察するとか身体反応を観察するといったって、やはり最初のうちは難しいです。

というか現在進行形で私も挑戦している部分です。

やっぱり怒りは生まれて、身体反応に気づいたときにはもう暴走しているなんてこともあるかもしれません。

その時に、怒りをこれ以上大きくしないためにできることが『心のおしゃべりを止める』ことなのです。

 

なぜこの方法が効果的かを考えると、案外簡単です。

怒りを再生産する動きは、交感神経系優位の身体反応によるものだけではありません。

火に油を注ぐ輩が、心のおしゃべりです。

普段から心は勝手におしゃべりしていますが、怒るとすごいスピードでしゃべり始めます。

・はぁ?むかつく。

・あいつ何様なの

・大体3週間前だって…

・これだから女ってのは…

などなど、もう関係ないことまで持ち出してきたりして、大騒ぎです。

この動きがますます『怒っているんだ!』という気分を高めてしまいます。

おしゃべりにまともに乗ってしまうと、怒りの流れにも乗ってしまいます。

ダンボーとストップサイン

大事なのはこのおしゃべりを止めることで、よくアンガーマネジメント(怒りコントロールの方法)では、『6秒カウント』という方法があります。

怒りのピークが過ぎるまでの6秒の間に、とにかくおしゃべりをやめる方法です。

数字をカウントする、深呼吸するなどの方法で、とにかくこの6秒を乗り切るのです。

本当に6秒でいいのかという点は疑問もありますが、いずれにしても頭のおしゃべりを止めるには有効な方法です。

とにかくカウント、カウント。

1,2,3,4,5,6……

※私は6秒以上やってもいいと思います。

ビーチと砂

ただ、うるさい頭の中を静めるのにカウントではうまくいかないケースもあります。

おしゃべりを止められない、どうしても無視できないときに使えるのが、『どうせ頭の中でしゃべるんならゆっくりしゃべる』ということです。

怒りというのは、とにかく速さ重視です。

怒りの時の体の状態は、『闘うか逃げるか』に適しています。

つまり、いち早く動けるようにしているということです。

心の中のおしゃべりもこれと同じで、怒っている最中のデフォルトのスピードはめちゃくちゃ速いのです。

この前提を壊します。

前提を壊してやれば、少し冷静になって筋弛緩法をやったり、カウントに戻ったりできます。

例えば、怒っているときに超スピードでこんな思考が流れてきて、それを受け取ってしまったとします。

『あいつむかつくひどい目に遭えばいいんだあの時ああ言わなければこっちだってイラつかなくて済んだしここまで怒ることもなかったのにetc…』

こんな感じで思考が大暴走しているときは、残り少ない制御力でこうします。

『あーーーーーいーーーーーつーーーーーーーーむーーーーかーーーーーつーーーーーーーーくーーーーーー』

という感じです。

実際やってみてください。

冷静さが取り戻せる方が多いのではないかと思います。

 

まとめ

すごく長くなりましたので、簡単にまとめます。

・怒りで疲れが出るのは、自律神経系の変化と副腎の疲れ

・怒りは出るものなので、ある程度はあきらめる

・疲れない怒りのためには身体反応・怒りのルールを観察することがおすすめ

・観察して得た身体反応や怒りのルール情報をもとに、筋弛緩法や思考を止める方法で怒りをコントロールしよう

 

怒りについてはここ1年くらいで考えがすごく変わった部分です。これからも進化したい…!!!

 

参考文献

[1]徳田完二(2007),「筋弛緩法における気分変化」